建築構法概論

東大工学部建築学科の授業「建築工法概論」のメモ

土・煉瓦の特徴は?

これらが使われるのは主に以下の3つ。

  • 日干し煉瓦
  • 焼成煉瓦
  • 土壁

まず日干し煉瓦について。日干し煉瓦は現在でも乾燥地域で使われている。泥を型に入れて乾燥させ、組積造で組み上げられる。
次に焼成煉瓦について。これは土を成形して焼いたもの。そのため焼成煉瓦を使うためにはその地域に燃料があることが必要である。
これら煉瓦はもともと構造壁に用いられたが、現在ではRC造の非構造壁にも用いられる。人が運搬可能な大きさと重量のため、施工は容易ではあるが、手間はかかる。煉瓦の接着にはモルタルを用いる。積み方にはイギリス積みとフランス積みの2種類がある。
土壁は伝統的な壁仕上げとして用いられてきた。

石材の特徴は?

石材は直方体に切り出されて煉瓦同様に組積造で組み上げられる。この際そのまま積み上げる構法とモルタルで接着する構法に2種類がある。耐震性は低いため日本では塀や蔵にしか用いられず、大規模な石造建築は見られない。薄く加工することで、壁の仕上げ材としても用いられる。硬い石は外装に用いられる。これらの石は吸水率が低い。逆に柔らかい石は内装に用いられる。表面仕上げには様々なやり方があるが、代表的なものは本磨き、叩き仕上げの2種類。叩き仕上げは床材に行うと滑り止めとなる。

要求性能とは?

建物に要求される性能。以下のようなものがある。

  • 防水性能:外装の性能で、雨水が侵入しない性能。
  • 断熱性能:建物内外間での熱の移動を抑える性能。
  • 遮音性能:建物内外間で音を透過させない性能。
  • 耐震性能:地震時に部材が破損・脱落しない性能。
  • 対風圧性能:台風などの強風時に部材が破損・脱落しない性能。
  • 耐火性能:火災時に延焼・倒壊しない性能。
  • 日常安全性:建物使用者の安全性が確保されること。
  • 耐久性:各部材の安全性や基本性能が劣化しないこと。

木材の性質を挙げてみよう

メリットは以下。

  • 比強度が高い。
  • 比較的安価。

デメリットは以下。

  • 火災に弱い。
  • 材料ごとの性質のばらつきが大きい。
  • 異方性がある。

異方性について詳しく

木材は外から作用を受ける際、受ける方向によって応答が異なる。例えば、鉛直方向(L方向)は外力に強く、乾燥収縮が小さいが、半径方向(R方向)や、接線方向(T方向)は外力に弱く、乾燥収縮が大きい。

含水率とは?

木材の全重量に対する水分重量をパーセントで表したもの。木材は含水率15%程度まで乾燥させてから使う。

なぜ乾燥させる必要があるのか?

木材は乾燥収縮を起こしてひび割れを起こす。事前に十分乾燥させることでこれを防ぐことができる。

針葉樹と広葉樹では性能は変わるの?

主に針葉樹は構造体に使われ、広葉樹は家具や造作材(建築内の構造には直接関係ない仕上げ材)に使われることが多い。広葉樹は水分量で寸法が大きく変わり、重くて堅いためである。

屋根の種類まとめ

代表的な屋根の種類を以下にまとめた。

  • 切妻屋根:最もスタンダードな屋根。屋根の荷重を小屋梁で受ける。妻面に開口部を設けられるが、雨がかりになりやすい。
  • 寄棟屋根:妻面を無くし、四方を傾斜にしたことで雨をよく軒方向に流すことができる。
  • 入母屋屋根:寄棟屋根の上に切妻屋根を乗せた形をした屋根。伝統的な日本建築に見られる。
  • 方形屋根:寄棟屋根の棟木を一点に集中した形。
  • 片流し屋根:切妻屋根を半分にした形。小規模な木造住宅に見られる。

瓦の葺き方まとめ

一般的には垂木→野地板→防水材→葺き材の順番で施行される。葺き方の種類は以下のような感じ。

  • 本瓦葺き:平瓦と丸瓦を葺き土に固定させる。社寺建築に用いられる。
  • 桟瓦葺き:桟瓦とは波形の瓦のことで平瓦と丸瓦を一体とした形状のもの。これを野地板の上に敷設した瓦桟に引っ掛けて釘で留める。

板壁の張り方まとめ

  • 羽目板張り:板を同一平面に幅方向に張る。
  • 下見板張り:板の端をまた板で抑えて張る。

板張りには主に以上の2種類がある。下見板張りはさらに細かい分類がされ、以下のような種類がある。

  • 押し縁下見板張り:板の短辺を押し縁で押さえる。
  • ささらこ下見板張り:ささら型をした見切り縁で押さえる。
  • 南京下見板張り:板の下端でその下の板の上端を押さえる。
  • ドイツ下見板張り:板を相欠きで上下に繋げる。ただし、上端を大きく削ることで、その境目がよくわかる見た目となる。

天井の種類まとめ

  • 格天井:天井に格子を組み、できた正方形の箇所に鏡板をはめ込む。
  • 竿縁天井:吊り木で野縁を吊って、そこに竿縁を取り付ける。その上に天井板を乗せたもの。和室に用いられる。
  • 目透かし天井:天井板の継ぎ目に目地を設けたもの。
  • 打ち上げ天井:天井板を野縁に直接打ち付ける。

階段の種類まとめ

  • 側桁階段:段板の両端を桁に差し込んだもの。
  • ささら桁階段:段板を両側下から桁で支える。
  • 力桁階段:段板を真ん中下から1つの桁で支える。

ガラスの種類まとめ

  • フロート板ガラス:一般的なガラス。破損時には破片が飛び散るので危険。
  • 網入り板ガラス:防火用ガラス。
  • 強化ガラス:熱処理を施して強度を高くし、破損しても破片が細かくなるようにしたもの。
  • 倍強化ガラス:フロートガラスよりも対風圧強度、熱割れ強度が2倍程度のガラス。割れ方はフロートガラスに似ている。
  • 合わせガラス:複数のガラスを接着したガラス。耐貫通性が強く、破損時に破片が飛び散りにくい。
  • 複層ガラス:複数のガラスを間に空気層を挟んでくっつけたガラス。熱貫流率が小さいため、断熱性能が高い。

ツーバイフォー構法の種類

ツーバイフォーは以下の2種類に分けられる。

  • バルーンフレーム構法:土台、通し柱、屋根、各階の床の順に施行する。
  • プラットフォーム構法:土台、1階の壁、2階の床、2階の壁...の順に作る。

丸太組構法(校倉造・ログハウス)とは?

丸太を交互に井桁状に積み重ねて壁を形成する。現在では交差部に通しボルトを設ける。

参考

東京大学工学部建築学科「建築工法概論」授業スライド